2023-01-27

女王蜂の短命化について

現代の一般の養蜂書は、「女王蜂の寿命を2〜3年、5年生きることとも。8年生きた例もある」と書かれているものです。百年ほど前の養蜂書では「4,5年」とされています。しかし、拙著『ミツバチのダニ防除』の172ページでも触れたとおり、やはり女王蜂の寿命は短くなっています。私の意見では「女王蜂は、1〜2年、一部に3年以上生きるものもある」というものです。


約半分の女王蜂が1年以内に死んでいます。繁殖力の高い健全な群れでも2年前後です。3年を超えるものはほとんどいません。

私は蜂を頒布しているので、長く生きる女王蜂がどれだけ生きているのか正確に把握できておらず、対して1年以内に死ぬ女王蜂はそもそも出荷しないので、どうしてもそちらを認識する比率が高くなる傾向はあります。

それを含んだとしても、女王蜂の短命化は、ネオニコチノイド農薬を含む農薬一般のせいだと考えています。

なぜ農薬のせいだと断言するのかというと、1年以内に死ぬ女王蜂が半分程度いるからです。季節の巡る地域で、寿命が1年以内というのは、生物としておかしいでしょう。そんな短期サイクルでは、どこかで種が途絶えてしまいます。少なくとも1年以上生きて子孫を残してから死ぬようでないと、生物として辻褄が合いません。3年以上生きる女王蜂がいるということは、本来的な性能として他の女王蜂も、同じほど生きられるはずです。

女王蜂の短命化は、働き蜂の短命化にもつながります。働き蜂も、半世紀前と比べて短命化していることは、塩水だけ与えて何日生存可能かという残酷な実験によっても裏付けられています。なお、その研究は原因までは探っておらず、それは他の研究者に委ねています。

私にできることと言えば、長寿の系統の選抜を繰り返すことくらいです。

2023-01-06

明治大正時代の「蜂虱」についての記述

セイヨウミツバチは日本に導入後、ほぼ直ちにヘギイタダニに寄生されるようになりました。しかし、当時はヘギイタダニの存在は知られておらず、対して蜂虱(ハチシラミ、ミツバチシラミバエ)の存在は知られていたことから、混乱して認識されていました。

当時の養蜂書の記述は、海外の文献情報を引き合いに出しているだけなのか、実際に見たのか、ハッキリしないケースもあり、今更著者に確認を取ることもできないため、書いている内容しか手がかりは残っていません。

結局のところ、青柳浩次郎がスケッチを残していてくれたおかげで、ヘギイタダニの寄主転換が最初期に起きていたことが証明されました(詳しくは、『ミツバチのダニ防除』をご覧ください)。それでも、本物のミツバチシラミバエが入ってきていたかどうかは不確かなままです。入っていた可能性も十分ありますし、見たという記述もあります。しかし実際のところはどうだったのでしょうか。

以下は、国会図書館デジタルオンラインにアップロードされている養蜂書(1889-1929)の明治大正時代の「蜂虱」についての記述を引っ張り出してきたものです。分量は多いですが、是非ご覧ください。