2023-05-12

「巣脾」か「巣板」か

現代において、「巣脾」も「巣板」も同じ意味で使われています。どちらも英訳すると、“comb”です。“comb”を日本語に訳す時に、「巣脾」か「巣板」かどちらにするか迷う問題が生じますが、どちらでも良いと思います。気をつけることがあるとすれば、ひとつの文章、書の中ではどちらかに統一することです。

私は『ミツバチのダニ防除』では、「巣板」に揃えました。別のケースでは「巣脾」に揃えています。

明治や大正、戦前の養蜂書ではもっぱら「巣脾」という語が使われています。江戸時代から既に“comb”は、「脾」だったからです。いつからか「巣脾」を「巣板」と呼ぶことが増えてきており、今は「巣板」が優勢です。

ただ、「巣板」と呼ぶべき理由は特になく、元々は「巣脾」だったのだから、私は「巣脾」が正しいような感触を持っています。

英語では“comb”なので、これをさらに細かく使い分ける必要も特に感じませんが、巣礎を使ってできた“comb”、あるいは巣枠に作られた“comb”は「巣板」で、そうでないものが「巣脾」のようなイメージを持っています。

養蜂は、法学や哲学、解剖学ほど術語に厳密性は求められていないので、「細かいことは気にしない」というのも可です。