2022-07-22

真夏でも巣箱を直射日光にさらすべきことについて

養蜂の世界には様々な論争があります。「巣礎vs無巣礎論争」、「ギ酸・シュウ酸論争」、「K字翅論争」等々。他にもまだまだあります。

法律問題についての論争は、法的知識についての不足や、「他人には言えないようなことをしている都合」などのために議論が起きています。しかしこれは、一意的に解決する類のものです。それでも、蜂の生態に関わることとなると、議論の決着はなかなかつきません。「科学的」と言っても限度がありますし、「経験」も、バイアスやプライドなどのせいで、信頼性が低いことはよくあります。病気については、さまざまな装置を(予算付きで)使える研究者でも、すぐさま断言できるようなものではありません。

「夏に巣箱を日陰に置いたり寒冷紗したりすべきか、直射日光にさらし続けるべきか」といった、簡単に答えが出そうなことでさえ、意見は割れ、まとまることがありません。

私は、ヘギイタダニやアカリンダニ問題の観点から、「夏に巣箱を直射日光にさらし続けるべき」という立場です。理由については拙著『ミツバチのダニ防除』をご覧ください。もちろん、人でさえ参ってしまいそうな灼熱の真夏の昼に必死に扇風活動を行っている蜂たちを見ると、寒冷紗をしたくなるのは自然な感情というものです。しかし、蜂がそうしてくれと言ったのでしょうか?

当養蜂場では、雄蜂巣房トラップ法と温熱療法の合わせ技の結果、ほとんどダニがいません。なので、巣箱を日にさらし続ける必要はないように思えますが、ダニとは別の重大な事実のせいで、巣箱は直射日光にさらしたままにしています。

その「ダニとは別の重大な事実」とは、「同じ養蜂場の敷地の中でも、日陰になりがちなところや、朝日は当たっても午後に早くから日陰になるところでは、越冬率が低い」という事実です。ダニではなく、場所が越冬の成否に関係しているとは驚きですが(人によっては驚くほどのことではないかもしれませんが)、これは何年も続いていることなので、私の中では厳然たる事実です。日陰に置かれた群れは、強群でも越冬中に力尽きることがあり、何度もがっかりしました。

真夏に高温にさらされることで、ダニ以外の何かも抑制されているのでしょうか。日がよく当たる群れは、採餌行動が活発なのでしょうか。蜂は熱帯の生き物なので、真夏の高温はむしろ普通のことなのでしょうか。日当たりが良いところの群れの越冬率が高い原因を断言することはできませんが、事実については断言できます。

皆さんがどう考えるのか、どうするのかは、まったくの自由です。

2022-07-01

セイヨウミツバチの巣屑−−無巣礎養蜂の利点

この写真のゴミは、セイヨウミツバチの養蜂家には見慣れないものと思いますが、ニホンミツバチの養蜂家なら見慣れたものでしょう。



これは、古い巣脾を働き蜂が噛じって粉々にした残滓です。巣屑自体は、セイヨウミツバチの養蜂家も見たことはあるでしょうが、これだけ大量なのは見たことがないかもしれません。なぜこのようなことが起きたのかというと、それは無巣礎の巣脾だからです。

一般的に、セイヨウミツバチもニホンミツバチと変わることなく、古い巣脾は噛じって壊し、新しいものに作り変えます。なぜこのような当然のことをセイヨウミツバチの養蜂家が知らないのかというと、巣礎を当然のように使っているからです。

パラフィンを含み厚みのある巣脾は、セイヨウミツバチは噛じらないため、巣屑も出にくいのです。巣礎のせいで巣脾が噛じられないことには問題があります。

一般的に、巣脾は菌など病気の原因の温床になっているため、巣脾・巣板は定期的に更新されなければならないものです。しかし、いつまでに更新すべきかは、汚染の進行度合いによるので、○年以内に更新が必要だと目安を言える人はいません。人によっては、一律に○年ごとに更新としたり、見た目の汚れ具合などを基準にしているようですが、いつまでにそうすべきかを明確に言える人はいないでしょう。私も分かりません。

しかし、これをミツバチに判断させるなら、養蜂家が巣脾・巣板の更新時期について頭を悩ます必要はなくなります。無巣礎養蜂には、そのような利点もあるのです。やり方は、『ミツバチのダニ防除』を読むか、以下のリンクからご覧ください。