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昆虫たちはどこに消えた?

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ミツバチの天敵にシオヤアブがいます。これによってコロニーが全滅することはありませんが、スッとミツバチに近づき捕まえて体液を吸います。逃げ足は速く、なかなか捕まえられず腹立たしい害虫です。 シオヤアブは夏に1か月ほど現れて、真夏になればいなくなります。悩まされるほどではありませんが、いなくなって欲しい類の虫です。 しかし今年はなかなか現れず、見かけるようになっても例年の半分といった印象です。昨年はオオスズメバチも、特にキイロスズメバチも数が少なく奇妙に感じていましたが、シオヤアブまで減っているのは不気味です。上荘の環境が悪化していることの証拠となると思いますが、何が原因でこうなっているのかまでは分かりません。 世界的な昆虫減少が起きている このような昆虫の不気味な減少は上荘だけの問題ではなく、世界規模で起きています。この問題は、ナショナルジオグラフィック誌日本版2020年4月号で警鐘が鳴らされていました。 https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/20/041700245/ この原因については、世界的な温暖化現象の文脈で語られることが多く、そうなのかも知れませんが、ネオニコチノイド農薬が原因かもしれませんし、はっきりした事を述べることができないもどかしさがあります。また、原因が分かったところで私がどうにかできるものでもない無念さもあります。

意外と軟弱なヘアリーベッチ

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「 今年のヒマワリ 」の続きです。 3月末から3か月間にわたって咲き誇ったヘアリーベッチもほぼ終了しました。 この3か月の間、驚くべきことに養蜂場のミツバチはほとんどヘアリーベッチを訪花することはありませんでした。河川敷に行けばヘアリーベッチ畑で乱舞しているミツバチを見るのは容易いことなのに、養蜂場ではまったく見向きもされなかったのです。 ヘアリーベッチが蜜を出していなかったわけではありません。スジボソコシブトハナバチは熱心にヘアリーベッチを訪れていたからです。また、ミツバチが遠くの蜜源植物に気を取られていたわけでもありません。ヘアリーベッチの横に生えていたレンゲやヤグルマギクには訪花していたからです。 こうした事実から言えるのは、ヘアリーベッチはヤグルマギクよりも魅力のない蜜源植物であるということ、また春の上荘エリアではヘアリーベッチよりも有力な蜜源植物が他にあるということです。 わたしは河川敷のヘアリーベッチとミツバチを見て非常に有力な蜜源植物だと考えましたが、それは蜜源が乏しいエリアでの話だったのです。わたしの養蜂場では用なしでした。何事も実際に試すことが重要であることを痛感します。 しかしこのことによってヘアリーベッチの価値が下がるわけではありません。ヘアリーベッチは緑肥としても使えますし、レンゲ同様に根粒菌によって土壌を栄養豊かにしてくれます。また、雑草抑えの役割を果たしてくれます。 この写真はヘアリーベッチが役割を終え、枯れた様子です。枯れ草が地面を覆い雑草の伸張を防いでいます。荒廃農地の草抑え役として使い出はあるようです。 他にも発見がありました。河川敷を征服したかのように見えるヘアリーベッチは、さぞ繁殖力の高い駆除困難植物と思われるかもしれませんが、押し返すだけで枯れてしまいます。意外と軟弱者です。 ところで、ヘアリーベッチは「適切な管理が必要な産業上重要な外来種」に指定されています。これはアレロパシーで他の植物を枯らす可能性があるからです。耕作放棄地などで撒く分においてはむしろ適切と言えるでしょう。 「ミツバチとレモンバーム」に続きます。

圃場整備事業によって失われたもの

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都台の坂を下ったところの分岐にある、かつてのPHSのアンテナが建てられていたところ、カーブの見通しを遮る迷惑な構造物と認識されているところには、上荘地区における圃場整備事業を記念した「竣工記念碑」が建てられています。 今でこそ田植えや稲刈りは機械で行われていますが、千数百年もの間、上荘ではそれらは牛や人手によって行われてきました。当時はそれしか方法がなかったので、圃場整備の必要はなかったのでしょうが、近代農業は機械で行いますし、また、すでにモータリゼーションの波は押し寄せていましたから、クルマや農耕機が通ることができる農道の整った四角い田畑にする必要がありました。 圃場整備は1979年(昭和54年)から1986年(昭和61年)に亘って行われました。これはわたしがちょうど小学生の頃の出来事です。しかし、そんな大事業が行われていた印象はありません。それでも、通学路に、道路側ではなく田側にフェンスが立てられたことは記憶しています。フェンスを立てるなら道路側でないと子供の安全は保たれないわけですが、それよりは田の方に入ったり落ちたりしないことが重視されたのだと思います。 上の画像は 国土地理院が 1965/06/09(昭40)に空撮したものです。クリックすると大きく表示されますので、ご覧いただきたいのですが、見土呂の湿地だった「水泥」以外はアートのような田ばかりです。 https://mapps.gsi.go.jp/contentsImageDisplay.do?specificationId=145449&isDetail=true こちらは1977/12/11(昭52)のもので、圃場整備直前のものです。桃山が開発され都台になっている以外ほとんど変わりがありません。 https://mapps.gsi.go.jp/contentsImageDisplay.do?specificationId=338910&isDetail=true このような昔ながらの田園風景は、圃場整備によって無くなってしまいましたが、無くなったのはそれだけではありません。「 井ノ口の清水 」も無くなりました。 それは、「井ノ口村の西7、800mのところにある井坂池の下の蓮池のそばにあった」と伝承されています。「 井ノ口の清水 」の記事の中では、「『井坂池』もその下の『蓮池』も、どの池

今年のヒマワリ

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「 タイムの花はヘギイタダニ駆除に有効か 」の続きです。 これは「サンフラワー」というヒマワリです。巨大なロシアンヒマワリと比べると小ぶりですが、絵に描いたようなヒマワリです。昨年は蜜源枯渇期のお盆の頃に咲きました。今年は4月中旬に蒔いたので、昨年よりも早く咲きました。 昨年、 ペットの餌を買ってばら撒いて 開花に到達したのは僅か2輪でした。発芽はしたのですが、ほとんどが雑草に日光を奪われてしまったのです。昨年採った種も貧弱で不安が残りましたが、今年は場所が良かったのか、ちゃんと土に埋めたからか、まずまずの発芽率です。 播種から10日でご覧のとおりです。 発芽から1か月と少しでここまで成長しました。 ヒマワリとは何の関係もありませんが、アナグマです。発芽した日の写真を調べていたら出てきたのでアップしました。 「 意外と軟弱なヘアリーベッチ 」に続きます。

今年のハチミツ

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「 生はちみつの発酵について 」の続きです。 昨年の上荘エリアは凶作で、蜂は増えず、ハチミツも採れず、越冬中に大量死が起きるなど、どこも散々でした。それでも、今年は昨年よりは幾分マシです(低い状態と比べれば、いつだって今の方がマシです)。 ハチミツを略奪する無慈悲な人間 当養蜂場では、基本的にハチミツは蜂の餌だと考えています。蜂が毎日コツコツ集めた蜜をごっそり奪って良い理由はほとんどありません。 ハチミツは人にとってはもちろんのこと、蜂にとっても貴重な財産です。蜂を騙しておびき寄せ、世話らしい世話もせずにハチミツを取ることは「盗み」そのものです。その盗みが罰せられないのは、「ハチミツの所有者が人間ではないから」という理由しかありません。 一方向の財の移動は均衡がとれていません。つまり互酬関係(何かを受けたら相応の何かを返すこと)が保たれていません。このような互酬性は人間の世界にだけ当てはまるのではなく、万物に当てはまります。一方的搾取が許される世界は宇宙のどこにもありません。この世界の理(ことわり)に反した採蜜は、略奪というより他ありません。 強いて採蜜の正当化事由を挙げるとすれば、セイヨウミツバチでは自力で対処できない、秋季のオオスズメバチからの保護や、ヘギイタダニの駆除をしてやっていることくらいでしょうか。他には、営巣場所を提供してやっていることも挙げられるかもしれません。 それでも、これらの「正当化事由」も、ハチミツの略奪の言い訳としては弱いように思えます。

タイムの花はヘギイタダニ駆除に有効か

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「 カモミールの植栽 」の続きです。 ご存じないかも知れませんが、今日はタイムの日です。タイムは6月18日の誕生花です。しかし、そんな日は人間が商売するために勝手に決めた日ですのでまったく気にする必要はありません。 さて、日本の養蜂界でにわかにタイムに注目が集まっているのは昨年から販売が開始されたチモバールの主成分であるチモールを多く含有しているからです。 このタイムを養蜂箱にいれればチモバールの代わりになって薬代を節約できる、と考える人はいるでしょうが、少し摘んで入れただけでは話になりません。チモバール一回分のチモール相当量を含有するタイムの葉は2、3kgになりますから。 結論を先に書いてしまいましたが、皆さんが試すのは自由です。入れたら入れたで多少のダニは落ちるはずです。しかし持続性はないので、続々と巣房から出てくる新しいダニを駆除するには2週間切らさずに入れ続ける必要があります。 そんな大変なことはできないからこそ製剤化された薬品が市販されているのです。 「今年のヒマワリ」に続きます。

アリストテレスとミツバチ

「 聖書とハチミツ7―シリア・ミツバチに喩えられたアモリ人 」の続きです。 アリストテレスについては特に説明不要でしょう。 アリストテレスは『 動物誌 』の第5巻21章と22章の中でミツバチについて書いています。そこには現代の知見からは大いに間違った珍説が多数収められています。 雄蜂は別の種類の蜂 アリストテレスは、ミツバチには「リーダー」と「役に立つ蜂」がいると考えました。それらはつまり女王蜂と働き蜂のことです。しかし、アリストテレスは女王蜂は雄だと考えていたので「リーダー」としています。また、雄蜂の存在には気づいているようでしたが、それは別の種類の蜂だと考え、「ケーペーン」と呼んでいます。これについては、女王蜂と働き蜂は外観がほぼ同じであるのに対し、雄蜂は大分異なるので、そのように考えたとしても仕方ないところはあります。 当時のギリシア人は女王蜂を雄だと考えいたので、アリストテレスもそれに倣っていたわけですが、そうするとミツバチがどのように生じるのかという問題が生じます。そこで当時一般的だった、「花から生じそれを連れ帰って巣房に入れている」という通説を紹介しています。この説は現代から見るとおかしな説です。アリストテレスは、有力説として「ケーペーン」が雄蜂で、ミツバチ(働き蜂)は雌という説や、リーダー(女王蜂)がミツバチ(働き蜂)を産むという説も紹介しています。これらの「有力説」が正解であることは言うまでもありません。 針、複王制、花の蜜の正体、幼虫の生態 針については、雄蜂にはなく、働き蜂にはあり、女王蜂にもあるが刺さないことを記述しています。これも自説ではなく、他の人の説としての紹介に留めています。 リーダーつまり蜂王(女王蜂)は、コロニーに数匹いると言っています。これはリーダーには2種類あるという先入観に基づいて観察した結果、導き出されたのでしょう。「火のような色」の蜂は、たまたま明るい色で生まれた働き蜂と思われますが、それをアリストテレスはリーダーにカウントしてしまったわけです。 蜂が蜜を花から集めていることは正しく認識していました。しかし、花の蜜は、花の分泌物ではなく、空気中の霧が溜まったものだと考えていました。これは当時のギリシア人が一般的に信じていた考えです。 小蛆、つまり幼虫の時は糞をしないが、出房後に糞をする、と書いています。これも半分間違いで、

翻訳『野生ミツバチの知られざる生活』のレビュー

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アメリカ合衆国のミツバチ研究者トーマス・シーリーの近著 "The Lives of Bees"の翻訳 が今年の2月に刊行されました。原書は良いのですが、青土社から出た翻訳は、残念ながら非常に大きな問題を抱えています。 このブログの読者なら既にお気づきでしょうが、この訳書の表紙の蜂はミツバチではありません。 ミツバチの特徴は腰がくびれているところです。訳書の表紙の昆虫はどこをどう見ても腰はくびれていません。背中の盾板もミツバチのものではありません。翅脈もめちゃくちゃです。種類はよく分かりませんが、何らかのマルハナバチを描いているように見えます。ハナバチも蜜を集めるので広い意味ではミツバチですが、訳書の主役である Apis mellifera ではありません。 翻訳者や編集者、装丁デザイナーらは誰も気づかなかったのでしょうか。 こんな表紙では養蜂家が手にしないとしても仕方ありません。わたしが著者なら目眩がして寝込んでしまうでしょう。

カモミールの植栽

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「 早いニセアカシアの開花 」の続きです。 蜜源植物というよりは花粉源植物となろうかと思いますが、今年からカモミールを植えています。 カモミールは俗に「植えてはいけない植物」として知られており、一度植えると駆除が困難です。幸いなことに養蜂場では、植物にはなるべく手間を掛けたくないのでむしろ丈夫な植物は大歓迎です。 カモミールを植えたのには花粉源以外にも目的があります。ハーブティーにするためです。わたしは学生の頃さまざまなハーブティーを試していました。ハーブは薬草のようで、ティーにするのは煎じているかのようで体に良いというイメージがあったからです。実際はほとんど体に何の影響もなかったというのが現実でしたが。 その後は紅茶にシフトし、紅茶は紅茶で種類が豊富だったため長く色々試したものでした。しかしその分カネもかかるので、再度ハーブティーにチャレンジすることにしたのです。 考えようによっては、そこらへんの雑草を煎じているだけですが、「ハーブティー」というジャンルに括ることで何か特別なことのように思えるのは面白いことです。 「 タイムの花はヘギイタダニ駆除に有効か 」に続きます。

温度センサーDHT11やDHT22を使った冷却システムの構築について

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「 “Raspberry pi”を使った温熱治療の冷却システムの構築について 」の続きです。 DHT11やDHT22とは 読者の中には「 GPIOピンにセンサーを接続してこそ Raspberry pi」という先入観を持っている人もい るかも知れません。しかし Raspberry piは道具に過ぎませんから、そのような縛りは不要です。農業はリアルなものですのでプラグマティックでなければなりません。 その点、 Switchbotの温湿度計 は広く出回っておりそれほど高価でもなく、温熱治療以外にも巣箱内や養蜂場の温度推移をロギングするのにも使えますし、もちろん普通に温湿度計としても使えるので、前の記事の構成で運用しても何の問題もありません。 それでも、既に Raspberry piで使える温度センサーを持っているなら、それを使わない手はありません。そこで、温湿度センサーとして DHT11 や DHT22 の使用を検討することにします。 DHT11は温湿度センサーとしては非常に廉価で、 Raspberry piの学習キットに入っていることもあります。そのため、既にお持ちの方もおられるでしょう。しかし、温度測定範囲:0℃ から 50℃、温度測定誤差:±2℃と、厳密な温度管理が求められる温熱治療では、不安が残ります。 DHT22は、DHT11よりも高価ですが、温度測定範囲:-40 ℃ から 80 ℃、温度測定誤差:±0.5℃と、信頼性は非常に高いです。下の写真のセンサーがDHT22です。 本記事ではそれら両方の使用方法について検討します。 DHT11やDHT22 の接続 DHTには、 ・電気供給の端子(+、プラス、VCC) ・電気を逃す端子(−、マイナス、GND、グランド) ・データを送信する端子(DATA、OUT) の3つの端子があります。 わたしの手元にあるDHT22では、左から「+、OUT、−」となっています。 これらの端子をRaspberry piの対応するGPIOピンとケーブルでつなぎます。 たとえば、 「+、プラス、VCC」は、ピン番号1番の3.3Vに、 「−、マイナス、GND、グランド」は、ピン番号9番のGNDに、 「DATA、OUT」はピン番号7番のGPIO4に、 つなぎます。 次の図で示すと、一番左上の3.3Vと書かれた1番ピンにプラス(+)を、2つあけて4つ

“Raspberry pi”を使った温熱治療の冷却システムの構築について

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「 現代農業6月号への寄稿について 」の続きです。 現代農業6月号への寄稿について問い合わせを頂いていますので、Raspberry pi を使った冷却システムの構築方法について公開することにいたしました。 寄稿記事の要点 詳しくは「 現代農業 」6月号の該当記事を読んでいただきたいのですが、ポイントは「ヘギイタダニは41、42℃を2、3時間保つことで殺すことができる」というものです。しかしミツバチも高温で死ぬため、「ダニは死ぬがミツバチは死なない」絶妙な温度を保つ必要があります。 この温度制御が難しいため、温熱治療は、基礎研究はあるものの、技術的に困難でした。もちろん金に糸目を付けなければできますが、それならわざわざ温熱治療を行う必要もないわけなので、安価で、電気系統のない養蜂場で、誰もができるシステムの確立が課題だったわけです。 幸い、シングルボードコンピュータ“Raspberry pi”は、養蜂箱に入るほど小さく、比較的安価で、柔軟性も高く、モバイルバッテリーで動作することから実現できた次第です。 機材の調達 必ずしもRaspberry Pi でなければならないわけではありませんが、最も多くの人に使われ、情報も多く、今後も生き残ると思われるRaspberry Pi が望ましいです。 Raspberry Pi は、「シングルボードコンピュータ」ですが、家電量販店では取り扱われていません。 Amazon や 楽天 などの通信販売で入手するのが一般的です。 「Raspberry Pi 4 Model B / 4GB」が必要ですが、それ以外にも、「micro sdカード8GB以上のもの」、「マイクロUSB TYPE C のACアダプタ 5V3Aのもの」、「micro HDMIケーブル」などが必要です。よく分からない人はセットのものを入手して下さい。 温度センサーとして、 SwitchBot社の温湿度計 を使います。これはBluetoothでスマホと通信できる温湿度計です。 このブログでも度々登場しています 。温度や湿度のログをグラフ表示することもできます。温熱治療中の温度検知とモニタリングはこれにかかっています。 他にも、「 USBで駆動する冷却ファン 」、「 モバイルバッテリー 」、「 ガーデニング用のビニール温室 」、「ポリエチレンやポリプロピレンの黒いシート」が必