2021-08-27

ハチはなぜ大量死したのか--夏の貯蜜切れ

ハチはなぜ大量死したのか--越冬失敗」の続きです。

夏は蜜源が乏しく貯蜜切れで餓死する群れが出ることもあります。これがそれです。

今年の夏は、強風を招いた台風9号の影響でオホーツク海気団が南に引っ張られ、涼しい夏/早い秋となりましたが、実質的な秋雨前線が停滞し、異例の長雨が続きました。

その結果、採餌行動は抑制され、蜂にとっても予定外の貯蜜切れとなってしまったのです。

2021-08-20

養蜂場ができてから--カボチャと獣害

ミツバチとレモンバーム」と「養蜂場ができてから--タバコの吸い殻の不法投棄」の続きです。

今年の夏は不思議なことに貯蜜が減らず、むしろ増えるという珍しい夏でした。もちろん、夏でも花がまったくないわけではなく、早朝に仕事をしているようですが、巣箱の温度を下げる仕事などで蜜が無駄に消費され、トータルでは減るのが普通なので、今年は例外的です。

このような変化は、気候の影響や蜂群の良好な健康状態などが影響していると思われますが、もしかすると養蜂場でカボチャを育てていたことも関係があるかもしれません。カボチャは真夏に咲き、多くの蜜と花粉を供給してくれる稀有な植物だからです。

カボチャは蜜源植物としての利用だけでなく、実を収穫することもできます。むしろそうすることの方が普通です。わたしのところでも順調にカボチャは育っており収穫を楽しみにしていたのですが、ある日突然、未熟な実も含めなくなっていました。残っていたのは宙にぶら下がっていた2個だけです。

犯人はイノシシです。現在、上荘ではイノシシ対策としての柵の設置が進んでいますが、加古川市の予算の都合上不完全なままで、まったく役に立っていません。それどころか、丁度養蜂場に誘導される状態になっています。イノシシの巡回ルートにカボチャを育てていて食べられずに済ますことはできません。

先ほど、「犯人はイノシシ」と書きましたが、イノシシには違法性の認識はないので罪はありません。悪いのは中途半端な対策のまま放置している加古川市の方です。


セイタカアワダチソウのシーズン到来」に続きます。

2021-08-13

わたしの養蜂具――燻煙器

 「わたしの養蜂具――虫眼鏡」の続きです。

前回は皆さんが使っていないと思われる養蜂具を紹介しましたが、今回は皆さんが使っていてわたしは使っていない養蜂具についてです。

それは燻煙器です。セイヨウミツバチの養蜂家のほとんどが燻煙器を用いています。煙で燻して蜂を大人しくさせるためです。蜂に煙を吹きかけるのは、「蜂が山火事と勘違いして巣から逃げる準備を始め無駄な闘争をしないためだ」、と一般に説明されています。対して、わたしの意見は、煙をかけたくらいで大人しくなったりはしないだろう、というものです。ニホンミツバチは煙を吹きかけなくても大人しいものです。ならば、煙は関係ないのではないでしょうか。

煙に効果があるかどうかはさておき、わたしがそんなことをしないのは、まず、蜂が可哀想だからです。何の罪も犯していないのに煙を吸わすというのは虐待です。わたしにはそんな酷い真似はできません。次に、蜂が襲ってくるとしても、面布を被って防護服を着て手袋をしていれば何の問題もないからです。さらに、気配を消して振動を与えずにそっとしていれば、蜂が騒ぐこともないからです。

わたしの意見では、燻煙器を使っている養蜂家は蜂を相当手荒く扱っているに違いありません。蜂に対する敬意が欠けているのでしょう。あるいは蜂をむやみに恐れているのでしょう。


燻製蜂蜜問題
巣箱に煙を入れる問題は他にもあります。蜂蜜が燻されてしまいます。燻煙器を用いる養蜂家の蜂蜜はさぞかしスモーキーなものに違いありません。少なくとも燃やしたものから生じる化学物質も蜂蜜に混入しているでしょう。細かい灰は間違いなく混ざっているはずです。

わたしは燻製のような蜂蜜は食べたくありませんし、人様に差し上げたいとも思いません。そういうこともあり、わたしは燻煙器は使っていないのです。

わたしの養蜂具――背負子」に続きます。

2021-08-06

現代農業9月号への寄稿について


現代農業6月号の温熱療法について編集局に問い合わせが多く寄せられたので、継続記事として質問に対し回答する機会をいただきました。

前回はRaspberry piを使う方法を示しましたが、それが普及の妨げになることがネックでした。そこで今回はRaspberry piを使わない方法を書きました。「機械にやらせる仕事を人間が行う」という逆転の発想で、Raspberry piがなくても温熱治療ができるようにしています。

具体的な内容については8月5日発売の本誌をご覧ください。もっとも今は温熱治療には向かない時期ですし、副作用などについては次々号で論じる予定ですので、それと合わせて読んでから行って欲しいと感じています。


温熱療法は日本では例がなく誰に聞くこともできなかったため、さまざま思い巡らし、実験し、よく観察し、試行錯誤し、なんとか一定のノウハウを確立することができました。これにより、ローコストで実践可能な完全無農薬の「ケミカルフリー養蜂」が、実際的な形で実現しました。これからは、誰でもやろうと思えば、多少の手間はかかりますが、無理のない形で薬を使わずに持続可能な養蜂を行うことができます。

現代農業9月号の紙面は限られていますが、ノウハウを凝集していますので、皆さんはわたしの失敗を「再発明」することなく、温熱治療を行うことができるはずです。

温熱治療技術は一定の形にはなりましたが、そのすべてを知った訳ではありません。温熱療法は特に天候や蜂群の規模など多くの因子の影響を受けるため、薬を入れたら終わりというものではなく、個々に日々にその過程は異なります。なので正直なところ、温熱療法は簡単でもお手軽でもないと感じています。脱化学的防除(ケミカルフリー)への険しい道のひとつといった具合です。それでも、何度か経験すれば「温熱療法」というものが分かってくると思いますし、まずまず実践しうるものなので、皆さんも体得する気持ちで温熱療法技術を身に着けていただければと思っています。

今回わたしも知恵を絞りましたが、皆さんはわたしが思いつきもしなかったようなグッドなアイデアをお持ちだったり、さらなる発見や発明をされたりするかもしれません。そういう情報を皆でシェアし互いに養蜂技術を高めることができれば、日本の養蜂の未来も少しは明るいものになるでしょう。