2019-05-31

複雑な栗の花

雌雄分かれる柿の花」の続きです。

6月は栗の季節です。といっても実の方ではなく、花の方です。
5月下旬から既に、栗の開花は始まっています。開花と言っても、栗の花は小さな花が連なって穂状になっており、花が咲くと言うよりは、白く色づくといった具合です。


雌雄異花


さて、栗の花は両性花でしょうか、それとも雌雄異花でしょうか。答えは「雌雄異花」です。白い穂は花ではなく小さな花の集合なのです。その花序には多くの小さな雄花が、花序の基部には雌花がついています。

これらが雄花です。
こちらが雌花です。
イガグリの前身のような花ですね。

柿の花は雄花が少ないですが、栗の場合はその逆になっています。また、柿の場合は雄花と雌花が別々になって離れていますが、栗はひとつの大きな花のような穂に多くの雄花と雌花を備えています。そのため、柿と比べると受粉のチャンスが高いように見えます。しかし、実際のところはどうなのでしょうか。


自家不和合性


栗には「自家不和合性」が強いという特徴があります。つまり、自分のところの雄花の花粉を受粉しても実はなりません。実るためには、他の栗の樹の雄花から受粉する必要があります。ひとつの穂に雄花と雌花が揃っているからと言って、実りやすいわけではないのです。

そこで役立つのがミツバチです。いうまでもなくミツバチは、樹から樹へ花から花へと飛び回っています。自家不和合性の強い栗も、ミツバチがいれば安心です。


虫媒花?風媒花?


今「ミツバチがいれば安心です」と書きましたが、栗は穂を垂らしています。あの形状から察して風媒花なのではないでしょうか?実際、あちこちに飛び散った栗の花粉を見たことがある人もいるでしょう。「クリ花粉症」という花粉症もあるくらいです。

確かに栗は、花粉を100mほど飛ばすことができる風媒花で、風によっても受粉可能ですが、現実の受粉は主に虫によって行われています。従って、「風によって受粉することもある、事実上の虫媒花」というのが実体に即しています。

虫たちも栗の花の蜜は大好きで、ミツバチだけでなく、クマバチ、カナブン、その他多くの種類の昆虫が蜜を吸いにやって来ます。これら訪花昆虫のおかげで、わたしたちは秋には栗拾いができるわけです。秋の味覚は今この時期の虫たちの頑張りにかかっているというわけです。


上荘の栗、薬栗


上荘では、栗の花は至るところで見ることができます。みとろ観光果樹園にも沢山植えられています。入場しなくても傍からよく見ることができます。

ところで、上荘には「薬栗」という大字があります。この薬栗は、かつては「葛栗」と書き表されていました。「葛栗」と呼ばれた時代には、葛と栗が豊富だったのでしょう。しかし、現在の薬栗は、取り立てて栗の木が多いわけではありません。1000年以上も前のことですからね。今の植生が昔から変わっていないと期待することはできません。


栗の蜂蜜


栗の蜂蜜はどす黒い色をしています。鉄分を多く含んでいるためです。

日本の養蜂家の多くは、栗の蜜が混じると生臭くなると言って、栗の蜜は採らずにミツバチの餌にしてしまいます。しかし、上荘で採れる栗の蜂蜜は、黒い色からして栗の蜜であることは確かなのですが、どいうわけか生臭さはありません。ニセアカシアの蜂蜜と混ざって風味が変わっているのかも知れません。

2019-05-24

雌雄分かれる柿の花


3週間ほど前に開花を始めたニセアカシアも、月曜日の晩に降った雨で散ってしまいました。そのニセアカシアと入れ替わるように咲き始めたのが柿の花です。
人間にとって柿のシーズンといえば当然に秋ですが、ミツバチにとっては初夏の今がまさにそれです。

さて、ミツバチが蜜を集める柿の花は一体どのような形をしているのでしょうか。


花の特徴


柿の実を見たことのない人はいないでしょうが、柿の花となるとどうでしょうか。実物を見たことがなくても、インターネットの時代の今なら、「柿、花」で検索すればすぐに画像は出てきます。

インターネット検索に出てくる柿の花と言えば、4枚の大きな緑色の萼(ガク)、そして4枚のクリーミィな黄色の花弁がほとんどです。それはそれで間違ってはいないのですが、その画像の大半は「雌花」の方です。
上の写真は柿の雌花です。ミツバチだけでなく、アリが集(たか)っていることもあります。アリも蜜を吸うのです。蜜を出すのは当然に雌花の方です。

次の写真は雄花の方です。雌花と比べるとこじんまりとしており、また花弁の開き方も異なっています。
雄花から蜜は出ませんが、それでもミツバチは訪れます。花粉を採るためです。

今度柿の樹を見られましたら、雌花だけでなく雄花も探してみてください。


雌雄異花


上のように柿の花は、 雄花と雌花が分かれているのが一般的です。中には、雄しべと雌しべを備えた両性花のものもあります。また、雌花しかつけない株と、雄花しかつけない株に分かれている「雌雄異株」のものもあります。その場合の雄花しかつけない株は、特に「受粉樹」と呼ばれます。

一言で「柿」と言っても種類は多いわけですが、ミツバチにとってはそのような違いはあまり重要ではないようです。ミツバチの関心事と言えば、雄花から花粉を、雌花からは蜜を可能な限り集めることだからです。


花粉交配者としてのミツバチの役割


先程「雄花と雌花が分かれている」と書きましたが、雄花と雌花が分かれている植物の場合、花粉を集めずに蜜だけを吸う吸蜜昆虫は蜜が出る雌花の方にしか用がないため、肝心の受粉は偶然的にしか行われません。柿の花としては、蜜の吸われ損となります。しかし、ミツバチは雌花の蜜だけでなく雄花の花粉にも用があるので、受粉は必然的に行われます。ミツバチが「主要な花粉交配者」と呼ばれる所以です。

もっとも、柿の雌花は必ずしも受粉しなくても実をつけることができます(単為結果性)。その場合、種なしの実となり、食べる側としては非常に都合が良いものとなりますが、花や実が落ち易くなる欠点があります(生理落果)。

一方で、受粉すると実は落ちにくくなります。 ミツバチが熱心に花粉と蜜を集めれば集めるほど、柿は多く実り、落ちにくくなるというわけです。

さて、柿にとってミツバチは必要でしょうか、それとも不要でしょうか。


上荘の柿


柿の花を見たくなったでしょうか?もし見るのなら今です。

上荘なら、家の庭に植えている人も多くいますし、畑に植えている人も珍しくありません。みとろ観光果樹園にも沢山植えられていますから、比較的容易に見ることができるでしょう。

複雑な栗の花」に続きます。

2019-05-17

誰が為に「みとろフルーツパーク」はある

加古川市における上荘町」の続きです。


「みとろフルーツパーク」と「みとろ観光果樹園」の関係


上荘町には、「みとろフルーツパーク」という市の施設があります。ガラス温室や展望台、バーベキューブース、花畑や芝生広場がウリで、市民の憩いの場となっています。
その西隣りには、これとコンセプトを同じくする「みとろ観光果樹園」があります。事実上連続した施設ですが、みとろ観光果樹園は地元の「みとろ生産組合」が運営する果樹園です。ぶどう狩りや栗拾い等、季節ごとにイベントを開催しています。

前者が市の施設で後者が私企業(農事組合法人)であるものの、ほとんど区別らしい区別がされていないのは、みとろフルーツパークの指定管理者が「みとろ生産組合」だからです。主体は別ですが、管理者はどちらも同じということです。市と私企業の協同は相乗効果を狙ってのことで、区別はされていますが事実上一体の施設です。


事業としての「みとろフルーツパーク」


この「みとろフルーツパーク」は、常勤スタッフ40名、非常勤スタッフ8名で運営されており、年間約4200-5500万円のコストがかかっています(人件費は約2800万円)。そのほとんどが市からの財政支出によって賄われています。

来場者数は推定で年間16万人程度です。一年に一度どころか数年に一度も利用していない市民は少なくないでしょう。ひょっとしたら一度も来たことがない市民も相当数いるかも知れません。

フルーツパークがオープンしたのは1999年です。開園から20年たったわけですが、27万の市民にとって(もちろん、市民以外も利用できるわけですが)まだ十分身近なものとはなっていないように思われます。

http://www.city.kakogawa.lg.jp/ikkrwebBrowse/material/files/group/260/h29_day1_1-2_mitoro-fp.pdf


ウォーキングセンター


フルーツパークの北側には「ウォーキングセンター」というあまり知られていない施設があります。

加古川市の意図としては、小野アルプス等周辺を散策するための拠点として活用して欲しいようで、無料の更衣室とシャワー室が用意されています。

また、研修室もあり、これもまた無料で利用できます。実際の利用は何かを研修するというよりは、空間をタダで使わせてもらえるといったもののようです。


八ツ塚古墳群


この「みとろフルーツパーク」の頂上、標高79-82mのところ(上荘町井坂八ツ塚山)に八ツ塚古墳と称されている5基の古墳があります。6世紀末に造られた1基を除き、3世紀後半から4世紀に造られたものです(加古川市史第四巻、pp355-356)。

古墳は5基しかないのに、なぜ「八ツ塚」なのでしょうか?地元では昔から、「8つの古墳がある」と言われてきたからです。発掘調査したところ古墳の数は5基だということがわかりました。数え間違えたのか、数え方が違ったのかは分かりません。

古墳時代の地元の有力者は、加古川を見下ろすことができる見晴らしの良いここが気に入ったのでしょう。

なお、石室は埋め戻されているため、あるのは盛り土と杭状の標識のみです。発掘の様子はギャラリーに展示されている写真で見ることができます。


蜜源植物


フルーツパークには非常に多くの梅が植えられています。2月頃に開花します。2月はまだ花が少ない時期ですから、ミツバチにとっては貴重な餌(蜜源)となっています。みとろフルーツパークは地元のミツバチを養っていると言っても過言ではありません。
それ以外にも、ローズマリーや、芝滑り近くのフレンチラベンダーも、ミツバチにとって魅力的な餌(蜜源)となっているようです。
このように、フルーツパークを利用する市民は必ずしも多くはありませんが、市民ならぬ「市蜂」にとっては大いに訪問し甲斐のある施設となっています。

心中池の謎」に続きます。

2019-05-10

ニセアカシアが開花を始めました

ミズバショウ自生地の南限を更新?」の続きです。


開花時期・開花場所


気温が非常に高くなった5月4日、都台外周と加古川ゴルフ倶楽部付近で今年最初のニセアカシアの開花を確認しました。
ニセアカシアとは、5月中旬から2周間ほどの間に白い花を咲かす、高さ10mほどの落葉広葉樹です。楕円形の葉と、固く鋭いトゲが生えた樹だといえばピンとくるかも知れません。

今の時期なら、長慶寺前の小川周辺、都台の外周、両荘苑周辺、下池付近、みとろフルーツパークから少し北に下ったところ、墓苑、斎場近くで見ることができます。


最重要蜜源植物


このニセアカシアは上荘では割とありふれているものの、普段意識することはないでしょう。それでも養蜂家にとっては最重要植物です。この樹から採れる蜜は、品質が高い上に大量に採れるからです。

上荘にニセアカシアが多いのは、都台造成時にニセアカシアの杭が用いられたからです。ニセアカシアは非常に生命力が高く、杭からも発根し再生することがあります。その再生したニセアカシアのこぼれ種が、都台を中心に上荘一帯に広がったのです。


ニセアカシアとアカシア


非常に紛らわしいことを書きますが、ニセアカシアの蜂蜜は「アカシア」の蜂蜜として売られています。しかし、5月に白い花を咲かせるこのニセアカシア(正式名称「ハリエンジュ」、学名「Robinia pseudoacacia」)は、3月に黄色い花を咲かせるアカシア(通称「ミモザ」、学名「Acacia baileyana」)とは別の植物です。
蜂蜜業界では偽装蜂蜜の横行が問題となっており、わざわざ商品名に「ニセ」を付けることがためらわれるため、「ニセアカシア」の蜂蜜に限り、市場では「アカシア」の蜂蜜として売られるようになっています。

なお、本物のアカシア(ミモザ、Acacia) の蜂蜜は売られていません。実際のところ、採ることさえできないでしょう。というのも、アカシアの群生地はめったにないからです。日本のみならず世界中を探しても、純粋なアカシア蜂蜜を採れる群生地は存在しないと思われます。また、開花時期が3月と、蜂群が十分立ち上がっていない時期であることからも、アカシアの採蜜は事実上不可能です。

一方で、ニセアカシアの群生地は至るところにあるので、純度の高いニセアカシアの蜂蜜(市場では「アカシア」の蜂蜜)を採取することは可能です。


なぜ「ニセ」なのか


正式名称の「ハリエンジュ」と呼べば良いところ、ニセアカシアはなぜ「ニセ」アカシアと呼ばれるのでしょうか。それはどちらもマメ科の植物で葉が似ているからです。アカシアのつもりで育てていたら、そうではなかったので「ニセ」アカシアと呼ばれるようになったと言われています。

ところで、当の本家本元であるアカシアの方は、「アカシア」と言う名よりもむしろ「ミモザ」という通称の方で知られているように思われます。しかし、学名でMimosaといえば、「オジギソウ(Mimosa pudica)」を指します。オジギソウの花はピンク色で、アカシアの花は黄色ですが、どちらもマメ科のため形がよく似ています。

まとめるとこうなります。


正式名称通称学名蜂蜜の商品名開花時期花の色
ニセアカシアハリエンジュニセアカシアRobinia pseudoacaciaアカシア蜂蜜5月
アカシアアカシアミモザAcacia baileyana--3,4月
オジギソウオジギソウオジギソウMimosa pudica--7,8月ピンク


アカシアの蜂蜜を買うときには


「アカシアの蜂蜜」は蜂蜜の中でも最も品質が高く、価格も他の蜂蜜よりも高いのが普通です。しかし、一部の不誠実な養蜂家はその価格差を利用して、アカシアの蜂蜜でないものを「アカシアの蜂蜜」と銘打って売ることがあります。そのような不届きな蜂蜜を避けるにはどうすれば良いのでしょうか。

まず、アカシアの蜂蜜は、ほぼ透明で薄っすらと黄色味がある程度のものであることを覚えておいてください。茶色やオレンジ、どす黒いアカシアの蜂蜜はありません。

また、国産のアカシア蜂蜜の収穫は6月以降です。市場に出回るのは早くて7月頃ですが、 人気が高いので夏の間には在庫切れとなります。あえて夏には売らずにストックさせておいて時期をずらして売る業者もいるかも知れませんが、秋や冬まで売れ残ることは通常ではありえません。

アカシアの蜂蜜を買うときには、注意して買うようになさってください。

雌雄分かれる柿の花」に続きます。

2019-05-03

加古川市における上荘町


かみしょう?かみそう?


上荘町とは、加古川市の北部に位置する、かつて上荘村だった区画です。地元の人は「上荘」のことを「かみしょう」と読むことが多いですが、行政側は「かみそう」と読ませたいようです。なお、「かみそう」をローマ字で表記する場合は"kamisou"ではなく、"kamiso"となります。

しかし、「上荘」の「荘」は中世の荘園(しょうえん)制度に由来していますし、地元の神社の名称は「上之庄神社(かみのしょうじんじゃ)」です。さらに、上荘小学校の校歌では同校のことを「かみしょうしょうがっこう♪」と歌います。「上荘」をどう読むべきかは明らかでしょう。


人口


果たして加古川市民は上荘のことをどれだけ知っているのでしょうか。上荘町には一度も行ったことがないという人は少なくないかも知れません。

加古川市の人口は2019年4月1日現在で、26万2647人です。対して上荘町の人口は4574人(1758世帯)です。つまり、上荘町住民は、加古川市民の約1.74%の割合しか占めていないのです。高校の40人クラスに1人いるかいないかといった程度です。

 加古川市の人口統計

ちなみに、
  • 1891年(明治24年) 2929人(586戸)
  • 1909年(明治42年) 3099人(587戸)
  • 1920年(大正9年) 2950人(619戸) 
  • 1935年(昭和10年) 3040人(621戸)
  • 1950年(昭和25年) 4086人(816戸)
でした(出典:角川日本地名大辞典(28)兵庫県(角川書店、1988年))。

ほとんど増えていないですね。1972年頃から分譲が始まった新興住宅地都台や両荘苑の人口を考えると、むしろこれまでになく人口を減らしています。なお、加古川市のホームページで確認できる限りでは、2002年(平成14年)の5737人が最も多く、それ以降ずっと減少を続けています。


都市計画上の位置づけ


加古川市には、「加古川市都市計画マスタープラン」というものがあります。それによると、加古川市は、北部・南部および中央部・臨海部の3つにゾーニングされており、北部は「主に農村および丘陵地域」と認識されています(ちなみに、南部・中央部は市街地、臨海部は工業地域とされています)。このような認識に基づき上荘町は、市街化とは正反対の開発管理区域(市街化調整区域)とされています。上荘町にはスーパーマーケットもありません。主な施設と言えば、「みとろフルーツパーク」、「日光山墓園」、「加古川市斎場」くらいでしょうか。他に挙げるとすれば、小野にある「竜ヶ池灰埋立最終処分場」、白沢にある「磐東第2不燃物最終処分場」があります。どうやら上荘は加古川市民にとっての最終処分場のようです。

加古川市都市計画マスタープラン

このように、市の都市計画に基づけば、上荘町が今後発展することはなさそうです。田園風景のまま、人口は増えることなく過疎っていくのでしょう。しかしこのことは、養蜂にとって非常に好都合なことです。