2024-10-25

天正遣欧少年使節団とBreve raggvaglio dell'Isola del Giaponeについて

戦国時代の著名なキリシタン・伊東マンショを知らない人はいないでしょう。学校で習いますからね。そのような誰もが聞き覚えのある人物が、日本におけるミツバチの秘密を解く鍵を握っているとしたら、それは面白過ぎる事ではないでしょうか?

ローマで彼らが、“Non hanno in quei paefi Api ne in confequenza il nobiliffimo frutto del mele & cera”、つまり「ミツバチがいないため、蜂蜜も蜜蝋もない」と言っていたことは、『日本列島の概要』(1585年)に記録されています。それは、以下のとおり、筑波大学デジタルコレクションの4コマ目の第3段落の冒頭に書かれています。

https://dc.tulips.tsukuba.ac.jp/s/pub_ja/document/rb_10079324022

この文献の発掘は、在野研究者の星・南方熊楠によるものです。彼が大英博物館で発見していなければ誰も気づかなかったことでしょう。私はこの文献を発掘することはできませんでしたが、熊楠が差し伸べたバトンを受け取ることができ、大変嬉しく思っています。

なお、Breve raggvaglio dell'Isola del Giaponeのvをuにしている文献もありますが、それは16世紀まで活字上でuにvを当てていたのを直したためです。私は直す必要を感じていないので、vのまま翻刻しています。熊楠も同様です。

2024-10-11

粘着シートトラップにかかったオオスズメバチはなぜ死ぬのか

今日のオオスズメバチ対策は、ゴキブリホイホイと同様、粘着シートに仲間をつけておびき寄せる方法が主流です。私も採用しています。しかし、なぜ粘着シートトラップにかかったオオスズメバチは死ぬのでしょうか?

熱で死んでいないのは確実です。ミツバチに刺されて毒が回っていることもありません。気門が粘着剤で塞がれている訳でもありません。それなのに、粘着シートの上で、10ないし30分のたうち回った後に速やかに死にます。もちろん中には数時間生きているものもいますが瀕死の状態です。どうであれ、粘着シートにかかったオオスズメバチの死に至る時間は、オオスズメバチ捕獲器に迷い込んだものと比べるなら非常に短い時間だと言えます。

死因が熱でも毒でも窒息でもないとすれば、「粘着シートトラップにかかったこと」が死因だと言えます。粘着シートから逃れようともがくことで、エネルギー切れになっているのです。人間も極度に疲労すれば死にますが、それと同じことです。

もしかして、粘着シートから逃れようと努力してもどうにもならず、むしろ事態が悪化する一方であることに絶望して死ぬのでしょうか。オオスズメバチに絶望するほどの知能はないと思いますが、そういう説明も成り立ちます。人も希望を保ち続けることで、過酷な状況で生き延び、希望をなくした者から死んでいくとも言います。しかしこれは多分にフィクショナルで、オオスズメバチに死の概念や死への予感、絶望はないと言うべきでしょう。

実際のところ、オオスズメバチは熱っせられなくても、動きを封じられれば死ぬのです。「熱殺」蜂球なんていうバズワードは嘘っぱちです。少なくともミスリーディングな呼び方です。

「蜂球」は間違いではありませんが、読者はくれぐれも「熱殺」などと言わぬよう気をつけられますように。