「初夏の蜜源植物“ネズミモチ”」の続きです。
この暑い夏、蜂は何をしているかというと、仕事がなく手持ち無沙汰にしています。意外に感じるかもしれませんが、夏は草木が青々と茂っているにも関わらず花は少なく、採りに行く蜜も花粉も乏しい時期なのです。
花が最も多い時期は春です。特に5月が最も多くの花が咲く時期です。なぜ開花が春に集中するのかと言うと、実がなるのに時間がかかるからです。もし咲き遅れるなら、実がつく頃には冬になってしまっていることでしょう。しかしそれでは遅いので、柿や蜜柑のような植物は、春から花を咲かせています。
花の少ない夏の時期に蜂のためにヒマワリを植えようと考えていたのですが、この度は、蕎麦を植えることにしました。
なぜ蕎麦なのか
蕎麦には大きく2つの種類があります。「夏蕎麦」と「秋蕎麦」です。農業の文脈において一般的に栽培されるのは後者の秋蕎麦の方でしょう。というのも、蕎麦は、多収性の作物を育てることが可能な春夏の間には栽培されることはなく、せいぜい晩秋の短い期間に育てられる程度のものだからです。
しかし、もし春夏の間特に栽培するものがないと言うのなら、土地を遊ばせておく代わりに蕎麦を育てることができます。「夏蕎麦」は、春や夏、そして秋に撒いても育ちます。そこでわたしは、この夏の蜜源枯渇期に備え「夏蕎麦」を育てることにしました。
蕎麦の良いところは、栽培期間が短いところです。種をまけば数日で発芽します。そして1か月もすれば、蕾をつけ花を咲かせます。播種から開花までの期間がわずか1か月なのです。なんと速い。
そして開花が始まると1か月もの長い期間にわたって花を咲かせ、その後1か月で実を成らせます。つまり、4月に種を撒けば5月には花を咲かせ、6月には実をつけ、7月頃には再び芽を出し、8月に花を咲かせてくれるのです。
このように夏蕎麦は、おおよそ3か月で一巡するので、年に3度も花を咲かせることができ非常にお徳なのです。また、それだけではなく、害虫にも強く手間がかかりにくいという特性もあります。実際のところ、春に種を撒いて放っておけば年中花を咲かせてくれます。
成長の様子
これは播種から1週間後の様子です。4月以降なら播種から数日で発芽が始まります。
数日で発芽すると言っても、個体差があります。1週間かかるものもあります。双葉が出揃う頃には、いち早く発芽したものは本葉をつけているはずです。
播種からおよそ1か月で蕾が出始めます。出蕾すれば1週間くらいで開花します。
咲き始めました。
開花が始まると、およそ1か月ほどの間咲き続けます。
その次の1か月は実をつける期間です。花は減り、その代わりに黒っぽい実がつきます。それを収穫しても良いのですが、その必要はありません。放っておけば、種がこぼれ、勝手に芽を出します。そしてこのサイクルが繰り返されます。秋には一面蕎麦畑になっていることでしょう。
「カラスウリは蜜源植物なるか」に続きます。