共観福音書の記述
このヨハネは、らくだの毛ごろもを着物にし、腰に皮の帯をしめ、いなごと野蜜とを食物としていた。マタイ3:4
このヨハネは、らくだの毛ごろもを身にまとい、腰に皮の帯をしめ、いなごと野蜜とを食物としていた。マルコ1:6
このらくだの毛衣と皮の帯は、当時人気の高かった昔の預言者エリヤのコスプレです。ヨハネは、アハブやバアル崇拝者のイゼベルを糾弾したエリヤになりきってユダヤ人に悔い改めを迫ったというわけです。
しかし、ここで検討するのは、ヨハネの主義主張ではなく、その食物です。
野蜜
「野蜜」とは一体何なのでしょうか。日本語に「野いちご」という語ならありますが「野蜜」という語はありません。
「野蜜」は英語ではwild honeyです。しかし何度も言っていますが、ギリシャ語で書かれていたものを訳語から考えても意味はありません。ギリシャ語では、μέλι ἄγριονです。μέλιがメリッサの「メリ」で、ἄγριονがアグリオンです。それぞれ「蜜」と「野生」という意味です。
「乳と蜜の流れる地」の「蜜」は蜂蜜ではなくイチジクかナツメヤシの甘味だと以前に述べましたが、この「野蜜」は蜂蜜で間違いないでしょう。なぜなら、イチジク/ナツメヤシを食べていたら「いなごとイチジク/ナツメヤシを食物としていた」と書かれていたはずだからです。
それでも疑問が完全に拭ぐえるわけではありません。なぜ、「野」蜜なのかの謎は残ります。
飼育しているミツバチの蜜を「蜂蜜」と呼び、野生のミツバチの蜂蜜を特に「野蜜」と読んだのだと言えれば簡単ですが、語義のみでそこまで言ってしまうのは憚れます。しかし憚れはしますが、きっとそういうことなのだろうと思います。それ以外に「蜜」にわざわざ「野」という修飾語をつける理由が思い当たらないからです。
蜂蜜ハンターとしてのヨハネ