聖書とハチミツ7―シリア・ミツバチに喩えられたアモリ人

聖書とハチミツ6--バプテスト・ヨハネの野蜜」の続きです。

これまで、「聖書と蜂蜜」についてシリーズで書いてきました。聖書の中にはまだもう少し蜂蜜が出てくるのですが、詩篇やエゼキエル書の中で「神の言葉は蜂蜜よりも甘い」などと書かれたりしていて、「そりゃ信者にとってはそうでしょう」という程度のものでしかないので、これからは別の観点から書いていく予定です。

これから検討するのはミツバチについてです。と言っても、蜂についての記述もそれほど多いわけではありません。聖書は養蜂書ではありませんからね。


蜂が追うように追いかけるアモリ人


申命記は、預言者エレミヤやユダヤの王ヨシヤの時代に、祭司らが書いたものです。その体裁は、あたかもモーセが書いたかのように書いていて、モーセが出エジプトから入カナンへの道のりを総括し、イスラエル人に訓示を述べるというものです。その冒頭で、カナンの地の先住民であるアモリ人は、新規入植を企むイスラエル人を追い返す存在として描かれています。

その山地に住んでいるアモリびとが、あなたがたに向かって出てきて、はちが追うように、あなたがたを追いかけ、セイルで撃ち敗って、ホルマにまで及んだ(申命記1:44)。(口語訳)

ここでアモリ人は「蜂が追うように追いかける」と喩えられています。この蜂とは一体何なのでしょうか。

一般的な人々の蜂に対するイメージは、敵を追いかけて刺す危険な存在ですが、養蜂家にとっては違います。蜂は意外に刺さないというのが、養蜂家のイメージです。もちろん蜜を取ろうとしたり、巣箱を叩いたりしたら出できて刺しますが、巣箱の前を歩いたくらいでは刺さない、というのが養蜂家にとっての共通認識です。仮に追いかけて来ることがあるとしても(これさえめったに起こりません)、数十メートルも逃げれば蜂は追ってきません。


攻撃的なシリアミツバチ


実は、ミツバチにもさまざまな種類があり、系統によって攻撃的だったりそうでなかったりします。たとえば今日ならアフリカナイズドミツバチが非常にアグレッシブで人が死ぬこともあることが知られています。養蜂家が蜂は刺さないと思いこんでいるのは、ほとんど攻撃的でないイタリア・ミツバチやカルニオラ・ミツバチを飼っているからです。しょっちゅう刺しに来るなら仕事にならないので、そういう蜂は自然に飼わなくなっただけのことです。

このアモリ人の喩えになった蜂とは、イスラエル土着の「シリア・ミツバチ」です。シリア・ミツバチを飼ったことのある日本の養蜂家はおそらく一人もいないでしょうが、非常に養蜂に向いていないミツバチです。

収蜜力は低く、寒さにも弱く、経済的価値は高くありません。それだけでなく、ミツバチの品種の中ではトップクラスの獰猛さです。もし巣箱にちょっかいを出すものなら、文字どおり数千匹もの働き蜂にどこまでも追いかけられることでしょう。とんでもないミツバチです。これでもセイヨウミツバチの亜種のひとつです。

以前の記事でソロモンの時代に飼育されたミツバチは、地元のシリア・ミツバチではなく、輸入されたアナトリア・ミツバチ(トルコ、アナトリア半島)だったと書きましたが、それはこのような理由によるものだったのです。

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