「額面蜂児」とは、隅から隅まで蜂児が詰まっている巣枠のことです。蜂の量は多い方が良いので、少しでも多く蜂児を育てようと、人為的に額面蜂児を作らせる人もいます。しかし私はそうしたことを推奨したいとはまったく思いません。というのも、それはヘギイタダニを増やす原因のひとつだからです。
よほど群れに勢いがある時を除き、巣枠の全面が蜂児で埋め尽くされることはありません。蜂児が多い場合でも、蜂児圏は、横長の楕円形、あるいは緩やかな逆三角形になるのが普通です。四隅が蜂児で埋まることはなかなかありません。
蜂は巣内で球を作りますから、中心は温かく周辺ほど温度は下がります。そのため、巣枠の端、四隅などは蜂が少なく温度が外気温の影響を受けやすくなり、蜂児の成長は遅れます。読者は、巣枠の端の方の育房が、蓋がかかったままになっているのを見たことがあることでしょう。
働き蜂の蛹の期間は通常は12日ですが、周辺の蛹はそれよりも1、2日出房が遅れます。もしヘギイタダニが寄生している場合、その1、2日の遅れのせいで、倍の数の成ダニが出てくることになります。
無理やり額面蜂児を作るのではなく、蜂に任せておけば良いのです。蜂が必要と判断すれば放っておいても勝手に額面蜂児を作ります。もしそうならないなら、それは必要ではないからです。目先の利益のために小手先を使ったりしないのが賢明です。