津島紀略が、根拠不明の「伝承」を書き残したため、対馬には継体天皇の時代からミツバチがいたと信じる人がいます。
しかし一般的に伝承は、それだけを根拠に歴史的事実だったとすることはできません。そうするには、その伝承を補強する証拠が必要です。それがないなら、伝承は伝承に過ぎず、過去の記録と見做されることはありません。
もし伝承のみを提出してさもそれが歴史的事実なのだと主張するなら、それは何か良からぬ意図がある、つまりは欺こうとしているのでしょう。
さて、その肝心の、対馬のミツバチの伝承はこれです。
https://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/ru04/ru04_01173/ru04_01173.pdf
54コマ目に書かれています。該当箇所を探すのは非常に大変でした。
原文に当たって驚いたのは、玉川大学の故・吉田忠晴氏の解説が誤読に基づくものだったことです。氏は読まずに書いたのでしょう。あるいは読んでも理解していなかったのでしょう。氏の解説は、「専門家が書いているから」という素朴な理由で無批判に引用され、信じられてきました。これもまた、日本の養蜂史を歪めた一因となっており由々しきことです。
これまでの日本の養蜂史の多くの部分は、「専門家」らが創り上げたもっともっとらしいフィクションとなっています。それらは、今一度冷静になって、人文科学、社会科学、自然科学の視座から書き直されねばなりません。