「ミツバチはどこから蜜を集めてきているのか」の続きです
セイタカアワダチソウは上荘では毎年9月末に咲き始めます。耕作放棄地が増えていますから、10月はどこを見渡しても視界に入ってきます。
このセイタカアワダチソウから噴き出す蜜は、秋期の蜂群の拡大に寄与するだけでなく越冬時の餌にもなります。セイタカアワダチソウはミツバチの生存と発展、帰趨を左右する重要な植物と言えます。
生態系被害防止外来種(要注意外来生物)
このミツバチにとって不可欠な天与の植物は、環境省によって「生態系被害防止外来種(要注意外来生物)」に指定されています。ブラックバスやアライグマ、アレチウリのような「『特定』外来生物」ではないので、セイタカアワダチソウに関わったからといって罰せられることはありませんが、そのような指定を行うことで、国はセイタカアワダチソウのことを快く考えていないことを表しています。
国は、帰化していたとしても「外来」の生物が在来の生物を圧迫する可能性があるため、未然に排除したいのでしょう。しかしこのような政策は欺瞞に満ちています。
まず、セイタカアワダチソウは国内の動植物の生態系に被害を与えるどころか、その生存に大いに貢献しています。その恩恵に与っているのは在来の野生のニホンミツバチだけではありません。スズメバチを含む多くのカリバチ、蝶や蛾、甲虫と数えきれない種類と数の昆虫がその恩恵に与っています。それらの虫たちは同時にそれらを餌にする鳥やその他の動物の越冬準備にも寄与しています。セイタカアワダチソウが栄えれば栄えるほど、地域の在来の生物もますます栄えることになるのです。
次にセイタカアワダチソウを日本に導入広めたのは他でもない明治時代の日本人でした。燭台のように鮮やかな黄色の花を咲かせるセイタカアワダチソウは、明治の人々を驚かせ喜ばせたことでしょう。しかしそれを現代の役人らは、奇異に見えるのか、気に入らない植物として「要注意」としています。傲慢という他ありません。
このような勝手な都合に翻弄されているものに、ヌートリアやアメリカザリガニ等があります。政策決定者らは勝手なものです。
目立つ者の宿命
上のとおり、セイタカアワダチソウは環境に貢献しているのにもかかわらず、環境省に「生態系被害/要注意」というレッテルを貼り付けられてしまっています。それだけでなく、人々から、喘息等花粉アレルギーの原因と濡れ衣を着せられることもあります。また、あろうことか、養蜂家からも「セイタカアワダチソウの蜜の臭いは人糞の臭い」と難癖をつけられたりしています。
しかし、こうした謂れのない非難は無知や誤解に基づくものです。
まず、セイタカアワダチソウはミツバチが花粉を集めていることからも推察されるように虫媒花です。風媒花のように花粉を空中に撒き散らすことはありません。故に花粉症の原因になることは、わざと花粉を被るようなまねをしない限り、通常はありません。実際のところ秋の花粉被害はブタクサの花粉に由来しています。
次に、セイタカアワダチソウの蜜の臭いについてですが、セイタカアワダチソウの蜜に人糞を連想させるような臭いの成分(アンブレットリド)は含まれていません。悪臭の原因はセイタカアワダチソウと同時期に咲く別の植物からやってきたものと思われます。
上荘には大量のセイタカアワダチソウが咲いており、当養蜂場のミツバチも当然に多量のセイタカアワダチソウの蜜を集めて来ていますが、蜜からそのような臭いが発っせられることはありません。上荘周辺にはおそらく悪臭の原因となる植物は生えていないのでしょう。
秋に咲いているのはセイタカアワダチソウだけではありませんが、あの鮮やかな黄色が目立ちすぎるため、様々な非難を招いてしまっています。もちろんその原因はセイタカアワダチソウにはなく、誤解している人々の方にあるのは言うまでもありません。
「暖冬と梅の花」に続きます。