2026-07-10

アミトラズ抵抗性をもつヘギイタダニの出現

『ミツバチのダニ防除』では、アミトラズ(アピバール)が効きにくくなっている研究があることに触れましたが、ついにアメリカ合衆国でアミトラズが効かないヘギイタダニが現れたようです。

アミトラズが効かなくなったアメリカのダニのはなし
2026/2/13  投稿者: Tshozo

アミトラズは、フルバリネート(アピスタン)と比べれば、ヘギイタダニは抵抗性を持ちにくく、かなり長期間にわたって世界中で使われ続けてきましたが、ダニの方が進化を遂げてアミトラズを克服したようです。

それと同じ系統は日本にはいないでしょうが、アミトラズも効いていないようなことを聞くこともあるので、日本のダニにもなんらかの変化があるのかもしれません。

『ダニ防除』上梓から4年半しか経っていませんが、オーストラリアがヘギイタダニ汚染国になったりと、早くも内容が変わりつつあります。もし改訂版を出すことができれば、色々書き直さないといけませんね。

この薬剤抵抗性を有する新ダニの出現についてですが、普通なら養蜂の未来に悲観したり、戦々恐々としたりするところですが、わたしのところはノーダメージです。相変わらず、「雄バチ巣房刺し」、「温熱療法」、「サバイバルテスト」のトリプルコンボで、一切の薬剤・化学物質を使わずにセイヨウミツバチの飼育を続けられています。わたしのところの横長16枚巣箱の蓋を開けると、どの群も蜂で満杯です。

ケミカルフリー養蜂は、趣味の延長の有機農業ではありません。薬剤に依存した慣行養蜂の限界を乗り越える必然的な方法論です。是非皆さまには、薬代がかかる高ランニングコストの養蜂から脱却し、ケミカルフリー養蜂に挑戦して欲しいと願っています。

ところで、上の記事の投稿者Tshozo氏には、

ミツバチに付くダニのはなし
2022/10/18 投稿者: Tshozo

の中で、拙著をご紹介いただいています。Tshozo氏に感謝申し上げます。

2026-07-01

未だにニホンミツバチを「日本固有亜種」だと主張する研究者ら

北海道千歳市にニホンミツバチの野生のコロニーが発見された、との短報が公開されました。

https://jxiv.jst.go.jp/index.php/jxiv/preprint/view/5029

その報告自体は、特段不思議でもなんでもないことなのですが、そんなことよりも、未だにニホンミツバチを「日本固有亜種」だと主張する職業研究者がいることに驚きました。

ニホンミツバチは、わずか約432年のうちに日本にしか見られないどのような特有の形質を獲得したと言うのでしょうか? それは一体どのような形質で、朝鮮半島のものとどんな差があるのでしょうか? 何を根拠にニホンミツバチを「日本固有亜種」だと言っているのでしょうか? 是非ともご教示願いたいものです。

もしかすると、「在来種」という現在最も危険なタームを避けようとして「日本固有亜種」というタームを用いたのかもしれませんが、「日本固有亜種」には当然の前提として「在来種」の意味が含まれています。つまり、ニホンミツバチを「日本固有亜種」と呼ぶことはそれを「在来種」と呼んでいることと同じです。

今どき「ニホンミツバチは在来種」と言うのは、分子生物学の基礎を理解しておらず、古文も漢文もやってこなかったと白状しているようなものです。

ニホンミツバチが「日本在来種」でも「日本固有亜種」でもないことについては、拙訳『全訳 家蜂蓄養記』をご覧ください。人文科学のみならず自然科学(地質学、分子生物学)の観点からも、ニホンミツバチが朝鮮半島由来の外来種であることをご理解いただけます。

以下は、短報の見出しの引用です。

--

プレプリント / バージョン1

北海道におけるニホンミツバチApis cerana japonicaの野生巣の発見

坂本, 佳子

国立研究開発法人国立環境研究所

吉田, 尚幸

北海道千歳市

森井, 清仁

国立研究開発法人国立環境研究所

抄録

ニホンミツバチ Apis cerana japonica Radoszkowskiは,アジアに広く分布するトウヨウミツバチApis cerana Fabriciusのうち,もっとも東方に生息する日本固有亜種である.これまで,ニホンミツバチの分布北限は青森県下北半島とされてきたが,2026年に北海道千歳市において野生コロニーの越冬が確認された.ニホンミツバチは北海道に自然分布しておらず,これまでに人為的な持ち込み事例が報告されていたものの,野生コロニーの営巣および越冬の記録はなかった.本報告は,近年の気温上昇により,ニホンミツバチが北海道において定着する可能性を示す重要な知見である.

2026-06-24

「ミツバチシンポジウム in 熊野」の延期について

台風7号接近のため、6月27日(土)開催予定だった「ミツバチシンポジウム in 熊野」は延期となりました。

https://www.facebook.com/apisceranaassociation/posts/pfbid0iTWFUUkyshbmM8vpJH82ma8GQ3zyZZmT9khhLT4DkPn7sucmS8yYdscBzDbNkhiJl

取り急ぎ以上です。

2026-06-19

推薦図書としての『全訳 家蜂蓄養記』

『全訳 家蜂蓄養記』刊行からおよそ二年半が経ちました。この間、さまざまな方面から高い評価をいただき、また江戸時代の養蜂実態の理解は深められ、ニホンミツバチの起源に関する学説も変わりつつあります。

多くの図書館に置かれ、公共図書館のみならず、大学図書館や研究所図書館にも配架される栄誉に浴しています。把握しているだけでも下のような大学図書館において、学生が読むべき図書として推薦いただきました。

  • 人間環境大学附属図書館:教員推薦図書
  • 県立広島大学学術情報センター:地域資源学科選書
  • 京都府立大学附属図書館:学習基本図書(学科推薦図書)

かつて国文学の分野では、古代中世の文献に一応「蜜」や「蜜蜂」が少ないながらも出てきますが、養蜂が行われていた気配はなく、イマイチ具体的でないのが問題になっていました。一方で養蜂関係者・ミツバチ研究者が「ニホンミツバチは太古の昔から日本にいる在来種で、日本人とともに生きてきた」と自信満々に言い、マルハナバチの蜜には全く見向きもしてこなかったため、国文学者は渋々文献上の「蜜」をミツバチの蜂蜜とするか、言及しないかしてきました。

そのような状況の中、『全訳 家蜂蓄養記』によって、それらがマルハナバチ由来の少量の蜜であり、古代中世の日本にミツバチはそもそもいなかったことが論証され、古代中世の曖昧な「蜜」問題が解決されました。おそらく、この業績を評価いただいた結果だと考えています。

私はこの業界に知己はないので、直接面識のない先生方が掛け値なしに評価された上でご推薦くださったことに感謝申し上げます。

2026-06-12

匿名のAI生成の「ニホンミツバチ在来種説」の記事などについて

「ニホンミツバチ外来種説」を受け入れたくない人がいるのは分かっています。ニホンミツバチが朝鮮出兵まで日本にいなかったことは記録上も分子生物学・地質学からも明らかになっているにも関わらず、それを無視して「ニホンミツバチは太古の昔から日本にいた在来種で、、、」と言い続ける人や、分子生物学の半端な知識を用いて、あたかも「ニホンミツバチは在来種である」というのが科学的だと論じ、すぐに間違いだと分かるその珍説をネットで開陳する人もいます。

思想・良心の自由、表現の自由はあるので、誰が何を信じ何を発信しようと自由なのですが、なるべく正しいことを発信すべきですし、発言には責任をもつべきでしょう。わたしは、実名で、しかも後から書き直しできない書籍の形で「ニホンミツバチ外来種説」を唱え発信しました。

ネット上の匿名言論の問題点は、発言者に責任が事実上ないことです。言い放しができます。旗色が悪くなったら削除してなかったことにできます。編集も可能です。アカウント削除で逃げることもできます。そのように責任を負いたくない人をいちいち「論破」していっても文字通りキリがないので、ネット社会におけるコミットの程度を考える必要があります。フルコミットはできません。そんなに暇じゃないし、人生の残り時間も限られています。

AIの性能が向上したことで、それらしい文章をいくらでも生成してくれます。それを利用して「ニホンミツバチ在来種説」が正しいような文章はいくらでも作れます。そのような空虚な文章を一つずつ検討していくという生産性のない仕事はできません。

かといって、科学的にも人文学的にも根拠のない「耳障りの良い」発言を放置して良いのかという問題もあります。また、見方を変えれば一種の中傷文ともいえます。なので私は、みつばち協会さんのオンライン勉強会の要請に応じました。できれば既刊の『全訳 家蜂蓄養記』や、みつばち協会さんのオンライン勉強会の配布資料や音声を利用して自習していただければと思っています。どうしても分からなければ、真摯な問いに個別に応じることはやぶさかではありません。

皆さまにおかれましては、匿名者の無責任な発言を信じてよいのか、AI生成の文章を鵜呑みにしてよいのかをまず考えられて、その上で分子生物学も突き詰めて学び、その上で、古文献も渉猟するくらいのことをして真偽の判断を行っていただきたいと思います。

追記

例のブログ記事は、とても査読と呼べるような物ではありませんが、次の「査読に AI を使われた体験談」と共通している問題を含んでいます。以下のリンクからご覧ください。

https://www.chem-station.com/blog/2026/07/review.html

2026-06-08

串本町における「ミツバチシンポジウム in 熊野」について

 6月27日(土)午後に、串本町文化センターにて「ミツバチシンポジウム in 熊野」が開催されます。

https://kankou-kushimoto.jp/archives/8907

そこで私は、「熊野・尾呂志孫次郎の朝鮮蜜蜂から始まる日本の養蜂」というタイトルで、熊野における養蜂の歴史、すなわち日本の養蜂の歴史について1時間ほど話をする予定です。

もちろん、話のベースとしてはニホンミツバチ外来種説に基づくものですが、その論証は既にオンライン勉強会で済ませていますから、今回はそれは当然のものとして詳しくは触れずに、熊野の養蜂がどのような経緯で発展し、それが全国的なものになったのかについてお話します。

オンライン勉強会と同様に、まだ文献未公表の内容なども含みますので、最新の研究動向を知りたい方にも、驚くような内容です。

楽しみにしていてください。

2026-05-12

みつばち協会のリモート講習会にご参加くださりありがとうございました

今回も多くの方がご参加くださったことに感謝申し上げます。

これまでの自然科学上の知見からも、ニホンミツバチが外来種であると言えることをご理解いただけたかと思います。

おそらく皆さまが驚かれたのは、これほど簡単なことが先入観のために、かくも容易く捻じ曲げられてきたことでしょう。

思い込みや願望が如何に私たちの目を曇らせるのかを知りった衝撃も大きかったかも知れません。

ハプロタイプからの説明は、前提知識がない人には若干難しく感じられるでしょうが、そのような下地のある人には一瞬にして諒解いただけるようなものですから、これからは恐れることなく「ニホンミツバチは外来種である」と主張してください。

2026-04-24

みつばち協会のリモート講習会について(2026年5月11日開催予定)

前回予告しましたとおり、勉強会の2回目です。

今回のテーマは、主に自然科学方面からのニホンミツバチ外来種説についての検討です。

DNAなどの話をしますが、重要な点はそれらの情報が既にオープンになっていたことです。ニホンミツバチが外来種である証拠は眼の前にあったのに、これまでずっとニホンミツバチファンタジーが騙られてきたということです。


<タイトル>

外来種だったニホンミツバチ--色眼鏡を外して目の前のデータと向き合う--

<講演概要>

ニホンミツバチが外来種である証拠は、長年私たちの目の前に置かれていました。本講演では、地質学や分子生物学など既存の研究を元に、​ニホンミツバチが自然分布した固有種ではないことを指摘するとともに、先入観に囚われずにデータを読み解く方法を基礎から分かり易く解説します。

<講師>

東 繁彦氏(『全訳 家蜂蓄養記』の訳注・解説者)

開催日時 : 5月11日(月)18:30~20:30(受講者入室 18:15~)

開催方法 : リモート勉強会(zoom)

定  員 : 50名 *どなたでもお申し込みできますが事前登録が必要です。

参加費  : 無料 *この講習会は日本中央競馬会(JRA)畜産振興事業の助成を受けて実施します。


2026-03-24

みつばち協会のリモート講習会にご参加くださりありがとうございました

昨日は多くの方がご参加くださったことに感謝申し上げます。

皆さまにとって、これまで信じてきたことが誤りだったことは衝撃的だったかもしれません。しかし、ニホンミツバチが外来種だからといってその価値が下がるわけでありませんし、愛せなくなるわけでもありません。

もしニホンミツバチがチョウセンミツバチだと知って愛せなくなるのなら、それはただの国籍差別であり、また歪んだ愛国主義です。そのような主義主張をミツバチに向けるのは間違っています。

ニホンミツバチ外来種説は、在来種保護をテーマにして科研費を得ようとする研究者や、在来種ストーリーで儲けている人々にとっては忌まわしいものでしょうが、そのような感情や利害を乗り越えて事実と向き合ってほしいと考えています。

むしろニホンミツバチ外来種説は、ニホンミツバチをさらに意義深い存在にします。

単純な在来種保護・外来種排除の図式が如何に浅薄なものであるのかを考えさせるものです。学者・研究者であっても思い込みによって容易に結論を誤ること、先入観を持たないことの大切さを教えるものです。歴史的に日本の成り立ちがいつの時代であっても多国籍的で、外国人や外国のもの、外国の文化や制度などが重なりあってできたものだと意識させるものでもあります。

今後ニホンミツバチは、「在来種だから保護する」という幼稚なメッセージ以上のものを伝えることができる存在にアップグレードするということです。

ニホンミツバチ外来種説は地動説です。

皆さまは、天動説が地動説に移り変わる瞬間に居合わせた当事者ですので、是非ともこのショーの行く末を見届けてください。

2026-02-20

みつばち協会のリモート講習会について(2026年3月23日開催予定)

3月23日に一般社団法人みつばち協会主催のオンライン勉強会が行われます。

私が話します。

テーマは、ニホンミツバチとマルハナバチについてです。


『外来種』だったニホンミツバチ〜真の『日本在来種蜜蜂』はマルハナバチである〜

<講演概要>

長年在来種だと信じられてきたニホンミツバチが、実は16世紀末の文禄・慶長の役の際に分捕りものとして朝鮮半島から持ち帰られた「外来種」であり、それまで日本にはミツバチがいなかったことを古文書・古文献を中心に解説します。

https://honeybee.or.jp/wop/

ご参加については以下からお申し込みください。

https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdQa0FKPCDsHkRDVmCiLG-GRXck6GBLOclNoUcK0ohU4s0-Kg/viewform


2026-01-23

japonicaという亜種小名について

ニホンミツバチは、秀吉の朝鮮出兵の時に持ち帰られたもので、その実態は、日本の在来種でも固有種でもない「朝鮮ミツバチ」です。それならば、Apis cerana japonicaを返上してApis cerana koreanaに改名しなければならないかと思ってしまいそうですが、必ずしもそうする必要はありません。

今更変えることは、かえって混乱を招くため、無理なことだからです。

学名にjaponicaが付いている生物は、ミツバチ以外にも多くあります。

代表的なものとしてコメがあります。アジアには、インディカ米とジャポニカ米があり、日本で主に食べられているのはジャポニカ米ですが、その学名は、Oryza sativa japonicaです。

しかし、その起源もニホンミツバチ同様、日本ではありません。ジャポニカ米は中国中央部が起源で、長江流域で栽培化されたものです。それが日本に伝わり、現代の私たちの主食になっています。

中国が起源だからと言って、今更Oryza sativa sinensisと改名するわけにはいかないでしょう。それと同じことです。学名は発見時の知識に基づいて付されるため、実態が明らかになればどうしても齟齬が生じるものなのです。

2025-12-26

今年のまとめ

今年の気候は、例年とは大きく異なり養蜂の継続に困難を覚えるほどのものでした。

まず、冬が長引き、蜂の起ち上がりが遅れました。ニセアカシアの時期には間に合わず、蜜が貯まり始めたのは、大量流蜜期の後半に差し掛かってからです。その結果、蜂蜜は凶作でした。

私の養蜂スタイルは、採蜜重視ではないので、今年の蜂蜜は、日ごろの感謝で知人に配るほか、直接取引希望者に配って終わりで、一般販売には至りませんでした。

また、冬が長引いたことと関係があるのでしょうが、全国的に蜂不足のため、問い合わせが多数ありました。需要にはなるべく応えたので、今年の管理蜂群数は小規模でスタートすることとなりました。まあでもこれは、目論見通りです。なるべく数を減らしたかったので。

昨年は管理蜂数が多く、ずっと疲労困憊し、腱鞘炎にもなりました。体を休めるだけの日々で、自分の仕事に手が回りませんでした。真夏は暑さでくらくらすることもあり、空調服程度ではどうにもならず、根本的に蜂数を減らすしかないと考えていたのです。

今年の夏は、ご存じのとおり、これまで経験したことのないような暑さで、夜明け前に家を出て日の出前後に内検を行いましたが、それでもきつく、命の危険を感じるほどでした。もし昨年並みの規模で蜂を管理していたら、倒れていたと思います。

夏の間の養蜂場の草刈りは無理というものです。しかしその結果、養蜂場はこれまでにないほど雑草に覆われるはめとなりました。気温が下がった九月の終わり頃から除草に取り掛かりましたが、それもまた重労働。除草は毎日少しずつ行うのが理想ですが、理想も暑さの前には吹き飛ぶというものです。

なんであれ苦痛になるほどならやらないのが、私のスタンスです。養蜂はやれればやりたいですが、必ずしもやらなくてもよいことです。来年はさらに規模を縮小させる予定でいます。

ダニ問題については特に困っていません。怪しい群れもあるにはありますが、基本的にどの群れもダニの影響を受けておらず順調です。越冬用の蜜は十分溜まっています。ダニ問題を克服することができ、その技術を日本の養蜂家の皆さんにお分けできたのは良かったですが、暑さを克服する方法はまだ知りません。

今年はオオスズメバチに6度ほど刺されました。二回さされるとアナフィラキシーショックで死ぬとか言われていますが、なかなか死なないものです。割と大げさに腫れますし、刺されたところは痛いですが、それでも理解できるレベルの痛さです。

一方、ムカデは強烈です。今年のことですが、人差し指を一噛みされただけで、瞬時に激痛が走り余りの痛さのために動けなくなるほどです。腕は動かせず、右胸まで痛み、三時間ほど痛みのために悶絶しました。しばしば映画などで、毒を塗った吹き矢に撃たれて瞬殺されるシーンがあり、毒がそんなに速くまわるわけがないだろと思っていましたが、それは演出ではなく現実でした。

ムカデの毒は、ミツバチやオオスズメバチとは違って、大きく腫れることはなく痒くもなく、しかも半日で落ち着き一日で快癒するものでした。実際に経験しないと毒にも違いがあるということを実感できないものです。

2025-11-28

マキタの電動刈払機が1年1か月で壊れたことについて

保証期限の1年を超えたところで、モーターから煙が出るようになり、力も弱くなり、沈黙しました。ソニータイマーを思い出します。30年くらい前ですが、ソニーの留守番電話機も1年1か月で壊れ、冗談だと思っていたソニータイマーを確信しました。

話は逸れましたが、マキタの電動刈払機が壊れた原因は、ナイロンカッターを使い始めたせいです。モーターへの負荷が高すぎ、高温になり、磁力が失われたようです。磁力は100℃くらいで失われます。

個人的な教訓としては、電動刈払機では、「チップソーのみ使う」を厳守することくらいです。もっとも、そのマキタの電動刈払機は、ナイロンカッターも使用可能な商品だったのですが。

かつて、エンジン式の刈払機で大木を何本も切り倒しましたが、シャフトの柄が折れただけで(←それはそれでありえないことですが)、エンジンはなんともありませんでした。エンジン式の刈払機の問題点は、混合油代がかかることです。またそれを毎回帳簿につけるのも面倒でした。

わたしの養蜂具――刈払い機

電動刈払機は、混合油はかかりませんが、やはり消耗品で、養蜂場運営で最もコストのかかる道具です。私は、ダニ駆除剤は使わずに何年もやっており、他の養蜂家と比べればランニングコストは低い方ですが、それでも、この刈払機関連のコストだけはなくすことができません。

2025-10-31

天工開物

本草綱目と被っており、分量も少ないのでそれほど重要性は高くありませんが、書に一項目として取り上げられるほど、中国では産業として確立していたことが窺えます。

https://dl.ndl.go.jp/pid/2556157/1/33

https://zh.wikisource.org/wiki/%E5%A4%A9%E5%B7%A5%E9%96%8B%E7%89%A9/%E8%9C%82%E8%9C%9C


2025-10-03

奄美大島のトウヨウミツバチはいつからいるのか?

奄美大島のトウヨウミツバチを「在来種のニホンミツバチ」と言って憚らない人がいます。いつになったら、その発言を撤回するのでしょうか?

このような厳しい書き方をするのは、奄美大島のトウヨウミツバチが、自然移入したトウヨウミツバチの証拠がないことです。そもそも奄美大島のトウヨウミツバチは、ハプロタイプが本土のものとは違っています。ならばどうして、在来種だと言えるのでしょうか? 日本本土のトウヨウミツバチでさえ在来種である証明は未だなされていないというのに。

上の俗説の主張者は、「根拠はないが、なんとなくイメージで」そう言っているのです。「奄美大島のトウヨウミツバチの在来種説」の証明責任を負っているのはその主張者です。そのような主張に反対する人が、在来種で「ない」ことの証明をする必要はありません。ただ単に、「在来種であることの証明はまだされていない」と指摘するだけで十分です。

奄美自体は昔からあり、人も住んでいました。あの『延喜式』にも名は出て来ます。しかし、奄美について文字の記録はほとんどないため、詳しい歴史は分かりません。奄美は、琉球や薩摩に統治されることはあっても、支配者を追放して自治を確立したことは、おそらくないほどに受け身な土地柄で、奄美の記録はもっぱら外部の者に依っています。

私が調べた限り、奄美にミツバチの記録が確認されるのは大正時代からです。江戸時代の記録も調べましたが、ミツバチがいた証拠は見つかりませんでした。ならばどうして、奄美大島のトウヨウミツバチが「在来種のニホンミツバチ」だと言えるのでしょうか? そのようなことがあるはずありません。

2025-09-12

『欽定古今図書集成』

陳夢雷『欽定古今図書集成』 (1728)と言って、それが何のことだか分かる人は、一体どれだけいるでしょうか? 「言うなればそれは『中国版古事類苑』です」と書くと、「『古事類苑』とは何ぞや?」となってしまうわけですが。これらの文献について私は、執筆しながら学んでいきました。

中国人なら中国の古典に通じていると期待できるので、中国人の論文などを読んでいくうちに様々な文献があることを知り、その文献を探しているうちに『欽定古今図書集成』を見つけることができました。

中国文学を専攻していれば当然知っているような文献なのでしょうが、私にはそういうバックグラウンドはなく、また指導者もアドバイザーもいないので、手探りの末にたどり着きました。それがこれです。

https://cnkgraph.com/Category/欽定古今圖書集成/蜂/4628

上のどちらも内容は同じです。漢字なのに読めないのは簡体字が使われているからです。現代中国語は簡体字問題があるため、過去の文献は直接原典を読んだ方が分かりやすいです。

中国は自国の古典を翻刻し、データベース化しており、非常に調査が捗りました。Chinese Text Projectは、そのようなデータベースの一例です。方や日本はというと、国会図書館と国立公文書館がスキャンした画像データはアップしているものの、翻刻データはほとんどアップロードされていません。この点日本は大幅に遅れており、古典に対する国文学者の意識の差が表れているように感じます。

もし日本の国文学者が、昨今の古典離れや古典不要論を嘆くのなら、まずはこのような古典へのアクセス問題を解消する努力を払うべきではないかと考えます。

2025-08-15

養蜂技術指導手引書2024 ミツバチヘギイタダニの生物学

日本養蜂協会のHPに、中村純氏の

養蜂技術指導手引書2024 ミツバチヘギイタダニの生物学

が、アップロードされています。

上の著作は、日本語文献が不足しているヘギイタダニの生態に焦点が当てられています。非常に詳しく、拙著『ミツバチのダニ防除』では触れていない知見や新知見など具体的に述べられています。

KタイプとJタイプについても詳しく書かれています。その議論を詳しく知りたい方にとっても有用です。まあでも、それが分かったところで自分の蜂群に寄生しているヘギイタダニの系統が分かるわけでもなく、変えられるわけでもないので、これまでと同じように防除は続けなければなりませんが。


ヘギイタダニの理解はますます深まっていますが、動物医薬やその他ギ酸やシュウ酸などの化学物質不使用の防除技術については、私の観点からは完成しています。私の養蜂場では、実験も含め薬剤や化学物質を完全に排除して5年以上になりますが、セイヨウミツバチ養蜂は継続できています。増えすぎる以外は特に困っておらず、来年もその先もこの調子でやっていけそうです。


課題のサバイバルテストは、防除というよりは目標です。ヘギイタダニ防除をしなければ、やはり9割は滅んでしまいます。今手元に、テスト群のうち生き残ったコロニーが一つだけあります。それは越冬中にほとんどの働き蜂が死にましたが、女王蜂と握りこぶしに満たない程度の働き蜂が、外部寄生中のダニとともに生き残りました。それらは現在徐々に規模を拡大させており、復活中です。

だからそれを、「ヘギイタダニの猛攻を切り抜けた抵抗性系統」と言えなくもありませんが、そう呼んで良いかと言うと、やはり憚れます。たまたま生き残っただけという感じがします。規模が小さいので採蜜どころではありません。蜂の量も、8月現在において分割はできません。来年は並の群れになっていると期待できますが、今年はただ飼っているだけです。命を繋いで行く生物としてはアリですが、商業養蜂としてはナシということです。

研究は尽きませんが、ヘギイタダニのことを考えなくても、商業的なセイヨウミツバチ養蜂ができるようになったら良いなと願っています。

2025-07-18

既に翻刻があるのにくずし字で読んでいた『折々草』


建部綾足の『折々草』とは、1700年代の旅行記です。綾足はその中で、吉野(奈良)の十津川での養蜂を記録に残しています。当時養蜂は、綾足自身のみならず読者のほとんどが見たことも聞いたこともないものだったので、わざわざ旅行記に特筆したのです。もし昔からミツバチがいて、農家が採取するようなものだったなら珍しくもないので、書に記したりはしなかったはずです。

ところで、私は建部綾足という人物を知らなかったため、『折々草』は清水浜臣(1776-1824)の『遠り遠り草』で知りました。内容は同じで、要するにパクリなのですが、『折々草』の存在を知らなかったので、執筆当初は『遠り遠り草』の方を引用文献にしていました。危ないところでした。

https://dl.ndl.go.jp/pid/2553998/1/36

くずし字で読みづらいですが、挑戦してみてください。私はなんとかそれを解読していきました。しかし後に、翻刻されたものが見つかりました。なぜすぐに見つからなかったかというと、タイトルが、『遠り遠り草』と『折々草』とではまったく異なっているため、『折々草』でサーチするには至らなかったからです。


『折々草』に到達できたのは、おそらく十津川の養蜂を調べたルートからだったと思います。出版前に翻刻を発見できたことは幸運でした。くずし字なんか正しく読めているかどうか分からないですからね。

くずし字は、その道のプロでも、どう読んで良いか分からないことは日常茶飯事です。そのような場合は前後から推測して「なんとなく」読んでいます。くずし字単体からだけでは正確には読めないことがあるのです。そのようなわけで、くずし字を判別するスマホアプリは十分ではありません。また、人間が読んでも、読み間違いはよく起きています。大学の先生の翻刻にも誤りはあります(もちろん、出版後に気づいて自己嫌悪に陥っていることでしょうが)。

なんとも曖昧なことをやっているのだなと思われたかもしれませんが、手書き文字ですからね。現代でも、悪筆、誤字脱字、書き間違いなど、さまざまな理由でどう読んでいいのか分からない手書き文字は珍しくありません。それと同じことです。

2025-06-20

オオゲツヒメ(大気都比売神)やウケモチ(保食神)から出て来たもの

オオゲツヒメは古事記に、ウケモチは日本書紀に出てくる食物の女神です。

オオゲツヒメはスサノオ(須佐之男)に、ウケモチはツクヨミ(月夜見)に、食物を出してもてなしますが、どちらも「汚い」という理由で殺されます。ひどい話ですが、それが私たちが食べている食物の起源となります。典型的な食物起源神話です。

なぜ食物の提供者が殺されなければならなかったのかというと、ストーリー上は、オオゲツヒメは鼻や口、尻から食物を出し、ウケモチは口から吐き出したからです。侮辱的に汚いので罰として彼女らは殺されたわけです。神話という観点からも、食物の生産は元となる食物(種)が死ぬことで多くを生み出すものなので、やはり死ななければなりません。

ここで問題なのは、オオゲツヒメやウケモチの死体から生み出されたものです。オオゲツヒメの場合、頭から蚕、目から稲、耳から粟、鼻から小豆、陰部から麦、尻から大豆が生じました。ウケモチの場合は、頭から牛や馬、額から粟、眉から蚕、目から稗、腹から稲、陰部から麦や大豆と小豆が生じました。次の通りです。

所殺神於身生物者、於頭生蚕、於二目生稲種、於二耳生粟、於鼻生小豆、於陰生麦、於尻生大豆(古事記 上)

実已死矣、唯有其神之頂化為牛馬、額上生粟、眉上生蚕、眼中生稗、腹中生稲、陰生麦及大小豆(日本書紀 神代上)

よく読んでみましょう。前者は、蚕、稲、粟、小豆、麦、大豆。後者は、牛、馬、粟、蚕、稗、稲、麦、大豆、小豆。何かが足りません。また何かが変です。まず、稲、麦、粟、大豆、小豆は理解できるでしょう。しかし蚕はどうでしょうか? 蚕は衣服に必要なものですが、食べ物ではありません。オオゲツヒメやウケモチの死体から、食べ物でない蚕は出て来たというのに、なぜミツバチは出てこなかったのでしょうか? 「そこは蚕じゃなくて蜜蜂でしょ」と、突っ込まざるをえません。

ミツバチが出てこなかった理由は、このブログの読者の皆様ならお分かりのことでしょう。この不可思議なエピソードについて、ニホンミツバチ在来種説の主張者は一体どのように辻褄の合った説明をするのでしょうか? 説得力のある説明をして頂きたいものです。


さて、話を小豆(アズキ)に変えましょう。従来の見解では、アズキはイネやムギなどと同様に大陸から日本に伝えられた、とされていました。しかし栽培アズキに限って言うと、中国よりも日本の方がアズキ種子の大型化が進行しており、日本起源説も有力でした。この度、農研機構のスタッフが、葉緑体に含まれているゲノムをより詳しく調べた結果、 アズキの栽培化は日本で始まったという結論になったそうです。

https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/ngrc/169242.html

このように、過去の思い込みが覆ることはよくあることです。ニホンミツバチの起源についても同様です。

2025-05-23

五月蝿

読者の皆様は、タイトルの「五月蝿」をどのように読まれたでしょうか?

多くの方は、「うるさ(い)」と読まれたことと思います。現代人なら大抵そう読むでしょう。もっとも、出題者の側としては「さばえ」という解答を期待していました。五月(さつき)の蝿は「五月蝿」と書いて「さばえ」と読まれていました。

「五月蝿(さばえ)」の意味は、もちろん「煩いハエ」です。旧暦で五月の蝿はうるさかったのです。現代の人は、今一ピンとこないかもしれませんが、一昔前まで初夏は蝿が大量発生し、文字通り五月蝿(煩)かったのです。養老孟司など戦前生まれの人々はそう言っています。ちなみに、今某所で大量発生し空を黒く染めているユスリカはハエの仲間です。環境が整えばハエはこの時期になると大量発生します。

このような長い前振りをしたのは、『日本書紀』の推古天皇三十五年(西暦六二七年)五月の十丈ばかりの蝿の大群について述べるためです。

卅五年春二月、陸奥国有狢、化人以歌之。夏五月、有蝿聚集、其凝累十丈之、浮虚以越信濃坂、鳴音如雷、則東至上野国而自散

皆さんは、原文を読まれたのは初めてかもしれません。読んで見られてどう感じられたでしょうか? これからミツバチをイメージされますか? 単に晩春ないし初夏の、煩いハエの大量発生なのではないでしょうか?

これを昔や今のミツバチ研究者が無理やり「古代の日本にミツバチがいた証拠だ」としたため、今日までそれはニホンミツバチの歴史研究の障害となってきました。牽強付会の何と罪深いことか。

さて、このハエを強引にミツバチだと論じる歴史捏造問題は脇に置いておくとして、春二月の「陸奥国有狢、化人以歌之」は面白いですね。当時はムジナが人に化けて歌うこともあったのです。日本の正史にそう記されているのですから間違いありません(笑)。